
「これが、パステル画?」
繊細な筆致。
絶妙な立体感。
絵の中に別の世界が広がっているような、奥行き。
一滴の水を落としたような、静けさ。
「これは、なんだ?」
最初に絵を見て感じたのは、純粋な驚きだった。
見る人を圧倒させる、確かな「力」を秘めている。
そんな世界を描く人が、どんなことを感じて生きているのか。
今回は、河口湖で活動しているパステル画アーティスト・黒川 鮭児(くろかわ けいじ)さんにお話をお伺いした。
「河口湖は特別じゃない。ただ、富士山がある」
柔らかく微笑みながら、そう語るのはアーティストの黒川さん。
観光業と日々の暮らしが交差する河口湖という土地で、静かに絵を描き続けている。
風景や人とのつながりをモチーフにしているわけでもないし、特定の“コンセプト”があるわけでもない。
けれど話を聞いていくと、黒川さんのなかに確かに根づく「描くこと」への誠実な姿勢が浮かび上がってきた。
河口湖の空気、富士山の存在、静かな暮らし。そしてAIという新しいツールの存在すらも、すべてが作品に溶け込んでいく。
「描くことは、やめなかっただけ」

「描き始めたのは、たぶん2歳とか3歳とか。その頃から描いてるけど……まあ、みんなそうでしょ?」
黒川さんは自分が『絵を描いていること』を、
「選んだわけじゃない」
「残っただけ」
と言う。
特別な意志や努力の結果ではなく、日常のなかで自然と「今も描いている」という状態。
それはまるで、言葉を覚え、会話をすることと同じように、絵が存在するような自然さだった。
「人間って、もともと誰でも描いてたと思うんですよ。やめた人と、やめなかった人がいるだけで」
「この世界に絵が生まれた。それだけで、少し良くなる」
絵を描く理由は聞かない方がいい。
そう思ったけれど「なぜ描くのか」、どうしても知りたかった。
黒川さんの答えは、こうだ。
「描いたあと、気分がいいんですよ。世界に一個、作品が増えるって、ちょっと良いことじゃないですか」
特に絵を仕事として扱っているわけではない。売るためでも、誰かに見せるためでもない。
しかし、その絵がこの世界にあることは、確かに意味を持っている。
「そもそも、絵を生み出そうなんて。ちょっと世界が良くなったらいいな、って思いがないと、描けないですよ。」
「可愛いから、パステル画。でもダークって言われる」

黒川さんの作品は、パステルで描かれることが多い。
淡く優しい印象を持つ画材を使いながら、作品からはどこか深い寂しさや異世界的な静けさが漂う。
「パステル画って、可愛いものが描けるんですよ。だから選んだ。扱いやすさとかじゃなくて、ただ『可愛い』から」
——しかし、作品を見た人の反応は少し違う。
「『暗い』とか『パステル画らしくない』って言われることもあるけど、あんまり気にしてない。可愛いかどうかって、見る人次第だから」
「子どもの頃の自分が、今も中にいる」

黒川さんの絵の『深さ』には、過去の体験が影を落としている。
「小さいころ、体が弱かったんですよ。家にいる時間が長くて……。その経験が、今の作品に滲み出てるんだと思う」
作品には物語性があるわけではない。しかし、その頃の「ちょっとかわいそうな自分」が存在している世界が、そのまま反映されているような感覚。
「今描いている絵も『その子が存在している世界観』みたいなもの。見せたいわけじゃなくて、自然とそうなっちゃうんです」
「AIに描かせるんじゃない、AIから借りる」
話はAIの話題にも及んだ。
「iPadでまずアイディアを描いて、それがいけそうだったら紙に写してパステルで描く。AIは、素材として持ってないもの、例えば『光がどう当たるか』とかを再現させるのに使う」
AIに対して、対立も過信もない。ただ、ツールとして淡々と使う。
「人間の能力に気負ってもしょうがない。AIがあるなら、使えばいいじゃんって思う」
「富士山があるって、それだけですごい」
河口湖の暮らしについて尋ねると、黒川さんは静かに言った。
「特別なことはないです。あるのは富士山かな。……でも、それだけで充分ですよね」
絵に富士山を直接描くことはない。けれど、近くの神社に足を運ぶと気持ちが落ち着くと言う。
「静かにならないと、描けない。神社に行ったり、自然の中にいたりすると、心が整う。それでようやく何か作れる気がする」
「売ることは専門外。見たい人が見ればいい」
「仕事にする気は?」という質問にも、答えは明快だ。
「絵で稼ごうとは、あんまり思ってない。俺の絵を見て『金になる』って思った人が、勝手に動いてくれればいいと思う」
どこに飾りたいか?という問いには、
「また自分で見に行ける場所がいい。誰かの家にあってもいいけど、もう一度見たくなることもあるから」と語った。
自分の絵に執着がないわけじゃない。しかし、執着しすぎてもいない。
あくまでも、どこまでも、自然体だ。
「もっと気軽に、生きてみたら?」
「最後に、読者に何かメッセージはありますか?」と尋ねると、こんな言葉が返ってきた。
「AIとかもあるんだから、もっと気軽にやればいいのに。
なんで人間の能力にそんなに気負ってるんだろうね。
もし何かを頑張るなら『なんのために?』を思い出してみてほしい」
この言葉もまた、『描きたいから描いているわけではない』という黒川さんの哲学に、通じているように思えた。
【パステル画アーティスト・黒川 鮭児(くろかわ けいじ) プロフィール】
山梨県富士河口湖町在住
可愛さと静けさが同居する独特の世界観を、パステルでを描く。
デジタル画やAIなども活用しながら、自身のペースで創作を継続中。
X:https://x.com/Kodkod_Esprit
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編集後記
「描きたいから描くわけじゃない。残ったから描いている」
黒川さんのこの一言が、ずっと印象に残っている。
絵に意味を込めるわけでも、伝えたいメッセージがあるわけでもない。
けれど彼の作品には、確かに『世界観』がある。
それは、無意識の深層からにじみ出た風景のようで、見る人の記憶や感情にふと触れてくる。
河口湖という土地、富士山の存在、静かな暮らし。
そしてAIという現代的なツールすら、彼にとっては特別ではなく、「描きたくなったら描く」ための静かな背景にすぎない。
気負わず、でも確かに『描き続けている』という在り方。
そこに、現代における「創作の自由」のヒントがあるように思えた。

